2026年3月21日土曜日

リーマンショックやコロナショックはどれくらいヤバい?中東危機に備えよう


リスクとリターンを正しく理解する

リスクとリターンを正しく理解する
─ 震災・暴落は「何シグマ」の出来事か?

「リスクが高い」「リターンが期待できる」─ こうした言葉は投資の世界で日常的に使われますが、実際にどれくらいの振れ幅を覚悟すればよいのか、具体的に把握している人は多くありません。本記事では、人気インデックスファンドのeMAXIS Slimシリーズを例に取り、リスク(標準偏差)とリターンのデータを整理したうえで、リーマンショック・トランプショック・コロナショックといった歴史的暴落が「確率論的に見てどれほど稀な出来事だったか」を解説します。

1. リスクとリターンとは何か

投資におけるリターンとは、ある期間にどれだけ資産が増減したかを年率で表した値です。一方、リスクとは収益率のばらつき(標準偏差)を指します。標準偏差が大きいほど、リターンが上にも下にも大きく振れる可能性があることを意味します。

リスクは「損失の危険性」だけでなく、「リターンの不確かさ(振れ幅)」を意味します。リスクが大きいほどリターンも大きくなる可能性がある一方で、損失も大きくなりえます。

正規分布の考え方に基づけば、リターンが平均±1σ(標準偏差の1倍)の範囲に収まる確率は約68%、±2σ以内なら約95%、±3σ以内なら約99.7%とされています。

σ水準 確率 発生頻度(年単位) イメージ
±1σ以内68.3%ほぼ毎年起こりうる普通の年の市場変動
±1〜2σ27.1%3〜4年に1度トランプショック級
±2〜3σ4.3%20〜30年に1度コロナショック級
3σ超0.3%以下理論上300年以上に1度リーマンショック級

※あくまで正規分布を前提とした理論値です。実際の金融市場では「ファット・テール」により、極端な事象はこの確率より頻繁に起こりえます。

2. eMAXIS Slim 4ファンドのリスク・リターン比較

以下の表は、eMAXIS Slimシリーズの代表的な4ファンドについて、ウェルスアドバイザー(wealthadvisor.co.jp)をはじめとする各種開示データを参照し、2025年末時点の実績をまとめたものです。リスク(標準偏差)は年率換算値です。

ファンド名 資産分類 年率リターン(5年) 年率リターン(3年) リスク(標準偏差・5年) シャープレシオ
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 全世界株式 +22.1% +16.8% 17.5% 1.18
eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) 国内株式 +16.4% +14.2% 18.6% 0.84
eMAXIS Slim 先進国債券インデックス(除く日本) 先進国債券 +8.9% +5.3% 8.2% 0.65
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) バランス型 +12.3% +9.4% 11.4% 0.96

※ウェルスアドバイザー・三菱UFJアセットマネジメント開示データ等を基にした参考値(2025年末時点概算)。投資判断の際は必ず最新の目論見書・運用報告書をご確認ください。

読み方の例:オール・カントリーは年率リターン約22%・リスク約17.5%。「平均的な年は±17.5%の範囲内で動く可能性が68%」ということを意味します。良い年は+39.5%になりえる一方、悪い年は−4.5%になりえます(1σの範囲)。

3. 歴史的ショックは「何シグマ」の出来事だったか?

過去の大暴落が、各ファンドの標準偏差と比較してどのくらいの「外れ値」だったかを整理します。シグマ数が大きいほど「理論的には起こりにくいはずだった」ことを意味します。

各ショック時の最大下落率(円ベース・概算)

ショック 発生時期 全世界株式 日本株 先進国債券 8資産均等型
リーマンショック 2008〜09年 ▲51.3% ▲56.7% ▲12.1% ▲38.0%
トランプショック(米大統領選後) 2018年10〜12月 ▲19.2% ▲17.5% ▲4.5% ▲12.8%
コロナショック 2020年2〜3月 ▲29.4% ▲26.8% ▲8.7% ▲22.1%

※リーマンショックはeMAXIS Slim設定前のため、各対象インデックスの実績値を参照した概算。円換算ベース。

シグマ換算と発生確率

上記の下落率を各ファンドの年率リスク(標準偏差)で割ることで「何σの出来事だったか」を算出します。

ショック × ファンド 下落率 年率リスク(σ) σ換算 確率レベル 理論上の発生頻度
リーマン × 全世界株式 ▲51.3% 17.5% ≒ 2.9σ 0.19% 約500年に1度
リーマン × 日本株 ▲56.7% 18.6% ≒ 3.1σ 0.10% 約1,000年に1度
リーマン × 先進国債券 ▲12.1% 8.2% ≒ 1.5σ 6.7% 約15年に1度
リーマン × 8資産均等型 ▲38.0% 11.4% ≒ 3.3σ 0.05% 約2,000年に1度
トランプ × 全世界株式 ▲19.2% 17.5% ≒ 1.1σ 13.5% 約7年に1度
コロナ × 全世界株式 ▲29.4% 17.5% ≒ 1.7σ 4.5% 約22年に1度
コロナ × 日本株 ▲26.8% 18.6% ≒ 1.4σ 8.1% 約12年に1度
コロナ × 8資産均等型 ▲22.1% 11.4% ≒ 1.9σ 2.9% 約35年に1度

※σ換算は「|下落率 ÷ 年率標準偏差|」による概算。実際の金融市場はファット・テール分布であり、正規分布より極端な事象が頻繁に発生します。確率・頻度はあくまで正規分布を前提とした理論値です。

リーマンショックは理論上「500〜2,000年に1度」の出来事でした。しかし現実には、わずか100年の間に複数回の大恐慌・金融危機が発生しています。これは金融市場が正規分布よりも「極端な動き」をしやすい(ファット・テール)ことを示しており、標準偏差だけを見ることの限界も意識する必要があります。

4. 各ファンドのリスク特性まとめ

ファンド リスク水準 リターン水準 ショック耐性 特徴・注意点
全世界株式(オルカン) 高(σ≒17.5%) 低〜中 世界分散でやや安定的。長期では高リターン期待。
日本株(日経平均) 高(σ≒18.6%) 中〜高 為替影響なし。景気・政治に左右されやすい。
先進国債券 低(σ≒8.2%) 低〜中 値動き小さい。ただし円安時は為替で変動大。
8資産均等型 中(σ≒11.4%) 8資産に分散。大暴落時も株100%より下落は小さい。

5. 振れ幅に耐えられる資産配分こそ、長期投資の要

ここまで見てきたように、リーマンショックやコロナショックはいずれも「理論的には滅多に起こらないはずの出来事」でした。しかし現実の投資人生において、こうした大暴落は1度ならず経験しうるものです。

最も大切なのは、「いざ暴落が来ても、売らずに保有し続けられる」ポートフォリオを事前に組むことです。過去のデータが示すように、いずれのファンドも長期的には回復・成長してきました。しかし途中で売却してしまえば、その回復益を享受することはできません。

たとえばコロナショック(全世界株式で約▲29%)に耐えられるかどうかを基準に考えると:

・100万円の投資が70万円まで減っても「持ち続けられる」と思えるなら、株式型メインのポートフォリオが向いています。
・80万円以下になると焦ってしまうなら、8資産均等型や債券を組み合わせた構成が向いています。
・精神的に苦しくなるとわかっているなら、最初から「リスクを下げる配分」を選ぶことが合理的です。

リスクの数字(標準偏差)は、自分が受け入れられる振れ幅かどうかを測るものさしです。高いリターンを狙うことも大切ですが、それ以上に「どんな局面でも継続できる配分」を選ぶことが、長期的な資産形成の成否を分けます。

まずは自分が「何σの暴落まで耐えられるか」を意識しながら、自分に合った資産配分を見つけてみてください。

本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の購入・売却を勧誘するものではありません。投資にはリスクがあり、元本を割り込む可能性があります。掲載データはウェルスアドバイザー・三菱UFJアセットマネジメント・各証券会社の公開情報を参照した参考値(2025年末時点概算)であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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